本来、壁は天井まで建てた方が防音性も意匠性も上がります。
ただビルによっては、天井まで壁を建てる欄間クローズという手段がどうしても取れない場合もあります。
機械排煙の場所が動かせない場合、高さ31mを超えるフロアで排煙の告示が厳しい場合、スプリンクラーの散水範囲を確保する場合など、大型のビルになる程、建築基準法や消防法の規制が厳しくなることがあるのです。
もちろん、設備の移設や増設、スラブから上階スラブまでの区画工事などにより欄間オープンを回避出来る場合もありますが、コストパフォーマンスが合わないことがほとんどです。
そんな時の解決策は、欄間オープンの良さを生かした「圧迫感の無い」デザインにすること。
今回のお客様もB工事のスプリンクラー増移設工事を回避する必要があったので、欄間オープンでエントランスを造作することになりました。
施工写真を多めに撮ったので、工事の詳細をご紹介します。
工事前はローパーティションで仮設運用中です。
着工前に材料と部材加工場所を確保します。
埋込の大型モニターを配置する壁面は、モニターの納まりとランマオープンの強度を考慮して壁厚を200mm以上にしております。
モニター部分の作りこみはこんな感じです。
壁の中はモニターを設置してしまえば見えないため仕上げませんが配線類は事前に仕込みます。
エントランスから執務へは片開きドア、応接室から執務へは親子ドアを導入しました。
壁紙は斜めの木目が特徴的なタイプを採用。
空いている欄間があるおかげで開放感があるので、ボードの仕上げは濃い配色や印象に残るデザインにしても全体的に圧迫感を感じません。
更に、テープライトの間接照明を入れるために、足元100mmだけ段差を作っています。
ちなみに、こういった目立つ柄のクロスは、柄のリピート(途切れ目)が目立たないように施工するために途中でカットして材料のロスが発生します。
そのため、使用する壁面の㎡数よりも多めの材料を計算しておく必要があります。
今回LEDテープライトとLEDサインは、お客様からの支給品を施工させていただきました。丁度12.5mmの段差に収まる約8mm幅のテープライトでした。
LEDテープライトとサインの制御スイッチは裏側(執務側)に取り付けました。
エントランスと応接は床も塩ビタイルに張り替え、サインとテープライトが付いて完成です。
業務中のオフィスの為、荷物のご移動や工事中の動線にご協力をいただきました。
いかがでしょうか。
欄間オープンにしなければならないケースでも、エントランスの質をあきらめる必要はありません。規制の多いビルに入居予定の企業様も是非安心してご相談ください。
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一級建築士 / 1級建築施工管理技士 / 宅地建物取引士 / 認定ファシリティーマネジャー
千葉大学工学部を中退後、2001年に24歳で株式会社アロワーズを創業。「働く環境こそが生産性向上の唯一の手段」という信念のもと、23年間にわたりオフィスの設計・デザイン・施工をワンストップで手掛ける内装工事業を行っている。