オフィスに必要な消防設備の一つとして、排煙設備があります。
建築基準法や消防法に定められた「火災が発生した際に煙を外に出す」設備のことで、排煙用の開口部(排煙窓)を開ける自然排煙や、機械を用いダクトを通じて外部に排出する機械排煙の2通りの方法があります。
よく排煙設備は「避難設備ですよね?」と言われることがありますが、建築基準法では確かに「避難施設」なのですが、消防法では「消防活動用設備」と定められています。
在館者が逃げる為だけでなく、その後消火活動をしてくれる消防隊の視界確保の為にも必要という訳です。
それでは、まずは建築基準法でどのようなどの様な建築物や用途で排煙設備が必要になるか確認していきましょう。
建築基準法の施行令126条の2を見ますと、下記の4つのパターンで排煙設備が必要とされています。
①延べ床500㎡を超える特殊建築物
映画館などの不特定多数が出入りする建築物、宿泊を伴うホテル・病院・共同住宅、学校等、物品販売を営む店舗などを「特殊建築物」と呼びます。
その特殊建築物で全てのフロア面積を合計して500㎡を超えると、排煙設備が必要ということになります(学校等など除外規定もあり)。ただ、「事務所」はどんなに大きくても「特殊建築物」ではないので普通のオフィスはこれに該当しません。
②延べ床500㎡を超え、階数が3階を以上の建築物
多くのオフィスビルはこれに該当しますね。ワンフロア100㎡以上(30坪程度)、5階建てって小さなビルでない限り、すぐ超えてしまいます。
ちなみにここで言う階数とは、純粋な階数のことではありません。
地下階も含みますので、例えば地下1F/地上2F建ての建築物もフロア数が3階以上となります。
ここまでで、「建築物」単位ではほとんどのオフィスで排煙設備が必要なことがご理解頂けると思います。
では残りの二つも見ていきましょう。
③延べ床1,000㎡以上の建物で200㎡以上の居室
延べ床面積が1,000㎡以上の建築物であれば、他の条件に関わらず中の居室が200㎡以上だと排煙設備が必要となるということですね。
④床面積に関わらず排煙上の「無窓居室」
排煙上の無窓居室とは、天井から80㎝以内の部分にある窓の面積が部屋全体の1/50未満である部屋のことになります。
つまり面積に関わらず、居室に窓が少なければ該当してしまうということです。
「オフィスの中に作った窓の無い会議室」をイメージして頂ければわかりやすいと思います。
お分かりになりますでしょうか? 例えば都心で考えると殆どが①②に該当し、さらに③④もあるので、殆どの建物・どの居室にも排煙設備のことを考えなければいけないということになりますね。
通常、オフィスは貸す前の状態ですと、排煙設備も整っているので規定に適合していることがほとんどです。
しかし、便利に使うために壁を建て部屋を作ると、「囲った小さな部屋」だけでなく、「執務スペース等の大きな居室」も排煙窓との位置関係によっては「排煙規定」に適合しないという場合も出てきてしまうのです。
ただ会社のオフィスとして、レイアウトを引いていくとどうしてもすべての基準をクリア出来ない!ということもあります。
その際は免除基準というものがありますので、そのままのレイアウトで変更をしないで済む可能性もあります。
免除基準については、次回詳しくお伝えさせて頂きます。
次回も乞うご期待下さいませ。
一級建築士 / 1級建築施工管理技士 / 宅地建物取引士 / 認定ファシリティーマネジャー
千葉大学工学部を中退後、2001年に24歳で株式会社アロワーズを創業。「働く環境こそが生産性向上の唯一の手段」という信念のもと、23年間にわたりオフィスの設計・デザイン・施工をワンストップで手掛ける内装工事業を行っている。