オフィスや店舗の賃貸契約を交わす際、通常、賃料の数ヶ月分相当額の保証金を貸主に預け入れる必要があります。
これは貸主が賃料の滞納などのリスクを回避するために、担保の目的で借主から預かるもので、一般に無利息で、契約が終了すると貸主は借主に預かった保証金を返却することになっています。
本来、一度預けたら契約が終了するまで残高はそのままのはずの保証金ですが、物件の募集条件に、「解約時償却2ヶ月」とか、「保証金の償却年3%」、などという表示がされていることがあるときは注意が必要です。
■「解約時償却〇ヵ月」とある場合
「解約時償却2ヶ月」などと定められていると仮定すると、保証金の預け入れが賃料の8ヶ月相当額であれば、うち2ヶ月分が解約時に差し引かれ、手元に戻ってくるのは6ヶ月分ということになります。
(こちらは解約時に1回差し引かれるだけなので更新時の補填はありません)。
■「償却年〇%」と有る場合
保証金が100万円で「償却年3%」と仮定すると、契約開始から1年目に100万円×3%=3万円、2年目に入るとまた3万円、3年目でさらに3万円と毎年3万円づつ保証金残高が減っていくということで、
契約期間が3年の場合、3年が経過した時点では、当初100万円だった保証金残高は91万円になっているという計算になります。
たいていの賃貸契約には、契約更新時には目減りした保証金を当初の残高に回復するという条項があるので、借主は契約を更新するとなると目減りした保証金9万円分を補填して残高を100万円に戻す必要があるということになります。
■償却は無し、という交渉もあり?
いずれの償却パターンであっても借主の負担であることには代わりがなく、借主からすると、『何で賃料以外にこの様なお金を支払わなくてはならないのか。』という気持ちが正直なところかも知れません。
しかし、「償却」と有る場合、保証金の一部が貸主の収入に充当されていき、その分保証金の残高が減っていくことになっているのです。
■そもそもなぜ償却があるの?
更新料の代替名目や、原状回復費用への充当のために設定されたかつての(貸主に有利な)習慣が今も残っている、という説がありますが、実際のところなぜ保証金を償却するのかという点については明確な根拠はありません。
当然のことながら借主には不評の慣習であるため、最近は徐々にではありますが償却の設定された物件は減る傾向にありますが、それでもなお多くの物件では「償却〇ヵ月」などといううたい文句が残っています。
■結局は賃料も含めた年間予算で考えるべき
大手デベロッパーや生損保会社の物件では償却が設定されている物件は殆どありませんが、これらの物件は建物グレードも高く賃料自体の水準が高いという面があります。賃料水準も高くなく償却も無い物件ということになると、まだ数自体が多くないというジレンマもあります。
どんな形であれお金が出て行くことには変わりがないと考えれば、償却費用を含めた年間の総支出を固定費と考え、その範囲で良い物件を探すというのが、現時点では最も現実的な考え方とならざるを得ない様です。
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